この度の千葉真一さまご逝去の報に接し、心から哀悼の意を表します。
昭和の終わりから平成にかけ、京都によく撮影でお越しになっていたのか、週に何度も照月を訪ねていただいておりました。
映画の強面印象とは違った、穏やかなお顔で優しいお方でした。
在りし日のお姿を偲びつつ、ご冥福をお祈りいたします。
千葉真一さまが気に入ってくださっていた
料理長特製の『焼きおにぎり』
こぼればなし 〜三代目女将の思い出話〜
昭和の終わりから平成にかけ、京都によく来られていたのか、週に何度も照月を訪ねていただいておりました。
深作欣二監督、成田三樹夫さんとご一緒の時、お話をされる姿を拝見しました。映画にかける絆のようなもの、そして一つのことに賭ける男のロマンを感じ、男同士っていいなと思ったもんどす。
千葉真一さんご本人の印象としてまず思い出すのが、自然に焼けた印象の肌。そして笑われると、その肌とは対照的な白い歯。
影の軍団や柳生一族の陰謀で演じられる、強面の忍者のイメージが強かったのですが、そばで見る千葉さんの目は、まるで赤ちゃんや動物を見たときのように自然と目尻が下がり、穏やかな顔になる優しい目元でした。
現代と違い当時の男性は、自分を全面に押し出す方が多かったなか、千葉さんは椅子をひいてお連れの方を先に座らせたり、食べ物を取り分けられたり、お酒をつがれたり。
そんな方を見たことがなかった私は、自然なしぐさに「ぽぅ〜」と見惚れたもんどす。ただ、お帰りの際に、タクシーのドアを開け「どうぞ」とお連れさんを先に乗せられる姿は、仁義なき戦いのワンシーンを観ているようでしたが。
お食事の最後に必ず注文されるのが「焼きおにぎり」でした。甘辛い醤油タレをぬりながら何度もゆっくりと焼きます。
焼きおにぎりが出てきた時だけは、誰よりも先に頬張られるんです。ひとくち口に入れられたら、周りの方に「美味しいの、美味しいの」と勧められるんですが、その姿と表情は一転、少年のようでもありました。
何度か撮影所に、焼きおにぎりを届けさせてもろたんですが、沢山のスタッフに配られるのか、後日「食べられなかったよ」と仰る。どんだけ持っていったらいいの? と悩んだのも懐かしい話。
故人のご冥福をお祈りいたします。